Parallel World


たまに行く近所の郵便局のATMの向きが90度回転していた。
予想以上にぎょっとした。

そういう普段何気なく目にしていた光景が
微妙に変わっているのを見ると、
ひょっとしてここは昨日までの世界に良く似た
パラレルワールドなのかもしれないと、
2~3秒本気で考える。
(まあ割と表には出さない)


十代の頃なら1分くらい悩み、幼少期ならそうか、と信じて納得してしまうだろう。逆に50代くらいになればそんな公共の物の角度の違いに気づかないかもしれない。


郵便局の人に、ATMの角度、変えたんですねと聞こうかと思ったが、
万に一の可能性「いえ、最初からこの角度ですよ」が
怖くて聞けなかった、、、。
もしそう言われたらどう受け入れればいいんだよ。


なんせ証拠がない。ここが昨日までの世界と同じだという証拠が。


きっと、この角度の方が便利だよね、と前から局員の間で話題に上っており、やっと変えることが出来たんだ、とそういう背景があるんだよね、自分に言い聞かせる。


断じて、あの、いつもの、入口から向かって右奥の角で、客の方を向いていないATMを保有する郵便局がある世界が、突然この世から消え去ってしまったわけではない。


それと、その郵便局ではちょくちょく限定切手を買っているので
なんか窓口の女性に妙に覚えられている気がする。
今日荷物を郵送しようとしたら、その女性ではない別の女性が担当してくれていたのだが、住所を書いている間にいつの間にかその女性が出て来て、
「こっちのが安い。そのサイズならギリギリ入るからこっちになさい」とサービス(?)してもらった。
最初に担当してくれた人には「そのサイズじゃ入らないと思って、、、すみません」と謝られた。まあ対した金額の差ではないんだけど。もしかしたら彼女は切手愛好者で、切手好きなら仲間同然、とか思われているんだろうか。


なんかその女性、ミランダ・ジュライの小説に出て来そうな人なんだよね。うまくいえないんだけど。(※アメリカの小説家。パフォーマンスアートもやっている。シュールでリアルな世界、憧れ。)

私がミランダ・ジュライだったら彼女をモチーフにしたシュールな短編小説なんか書けちゃいそう。そんで岸本佐知子あたりに翻訳されたりなんかするんだろうが、まあ別に私はミランダ・ジュライでもなんでもないのだった。

そんなん書かれたらどんな素敵な人なんだろう、と思うかもしれないが、多分予想以上にごく普通の人です。40歳くらいの。


ごく普通の人やごく普通の光景こそが、
なんか得体の知れない何かを含んでる気がしてしまうのは、
それは変な小説の読みすぎのせいだろう。