ゴーレムの倒し方

 

ゴーレムの正しい倒し方を知っている人間が現代日本に何人いるだろうか。
正解は
「ゴーレムの額に記された"emet"(真理を意味する)
の頭文字"e" を消し去り"met"にすると、その言葉は死を意味するので
ゴーレムは土に還る」だそう。

もしゴーレムを倒さなきゃいけない場面に出くわしたら、
試してみて下さい。



とまあ『幻獣辞典』にはこんな事まで載っている。
私はすっかりこのホルヘ・ルイス・ボルヘスというアルゼンチン人が執筆し、1974年に出版された本に首ったけだ。

全ページくまなく、アジア、ヨーロッパなどの世界各国、古代から現代に至るまで古今東西の奇想天外な生き物の事が載っている。
これは人類の想像力のカタログだなあ。

特に気に入ったのは
カフカの想像した生き物『オドラデク』。
一見平たい星型の糸巻きのようなこの生き物は、
屋根裏、階段、廊下などに潜んでいる。
話しかけると、簡単な質問には気まぐれに答える事もある。
笑ったりもする。

それから、ドッペルゲンガーって悪い意味に捉えられがちだけど、
(『自分そっくりの人間を見たらその人間は死ぬ』ってやつね)
ユダヤ人にとっては不吉なしるしではなく逆に予言者の力を得た証だったらしい。ふむふむ。



幻獣と冠しているからには、
現実には存在していないのだろう。
しかし私がこういった非現実の世界を面白がるのは、
何よりその想像力。

なんだって人々はこんな奇妙な生き物を
想像せねばならなかったのだろう。
何のために。
これらの生き物は、実際にはいなかったのかもしれないが、
それを産み出した人間の脳裏には
確かにくっきり見えていたのだろう。

恐怖を作るのも、
また逆に安らぎを作るのも、
この脳味噌。

面白いな~