postcard

以前勤めていた会社の社長が、

私の送ったポストカードを

いつも持ち歩いてくれているらしい。

 

それを知って不覚にも人前で泣いてしまった。

そういうのに弱い。

 

もう半年くらい前に送った

なんてことない住所変更のハガキ。

うさぎが"thank you"というロゴが入った

tシャツを着てるイラスト。

下半身丸出しだから何か履かせりゃ良かったな。。。

とか思っていた。

 

 

今もその会社に勤めている同僚がそれを話したあと、

私の目から急に出る液体が止まらないので

「真理子さんの絵好きだったのかもね」と言ってくれた。

そういや在籍中も私が描いたヘタクソな

クッションデザイン画をパソコン画面の横に

貼ってくれてたっけな。

あれで一儲け出来たかな。

それなら本望です。

 

鬼のように厳しい人だったので、

普通に優しい人がずっと持ってくれてるのとは、

なんか違う。

 

彼女に褒められて今だに覚えてることがある。

社内で数人に新商品のアイデアをプレゼンするときに、

私がノートの隅っこに描いてた、

描いてるとも言えない描きかけの何かを

(ぐしゃぐしゃってつぶしてたかもしれない。)

「こういうのがいい。

もっと考えようとしてくれたのがわかる」

と言われたのが印象的だった。

 

いろんな事が得意じゃないから、

いつもアイデアだけはいろいろ出そうと思ってて

喫茶店で必死に考えてたけど、

そこを褒められるとは夢にも思わず、

びっくりした。

 

何個も何個も描いてる、

そのはじっこの、形になってないやつ。

 

事情があって最終的にやめたけど、

やめる時に

「あんたみたいな人間にしかぬいぐるみは作れないよ」

と最後声をかけられた。

本気かどうか分からないけど、

何でそう言ったんだろう、と今も時々考える。

 

皆ぬいぐるみ会社なんて

童話の世界みたいなところで

布の動物たちが生まれてるみたいに

思っちゃうかもしれないけど、

コストやら法律やら、

普通にめちゃくちゃリアリティの世界なので、

作ってる人たちは、全然ファンタジーじゃないよ。

 

社長は、ぬいぐるみ作りを

「私はゴミを作ってると思ってる」と言ってた。

私たちは、毎日真剣にゴミを作っていた。

たくさんの布の命を作って、

そしてたくさん屠殺した。

何をされても、ぬいぐるみはふわふわで柔らかい。

 

草間弥生みたいに何億もする絵なんて

到底描けないと思うけど、

どっかの誰かがずっと持っててくれるなら、

絵描いてて良かったな、と思う。

 

それが鬼のような人なら、尚更。