京都編ー共食い金魚ー

清水寺付近の様々な和風雑貨屋を多数見て、
歩き疲れたので一休み。
丁度路面にあった、店内の壁一面が水槽になっているカフェに入る。

紅茶とグレープフルーツジュースを注文し、
目の前の金魚達を、旦那と2人でボーッと見るともなく見ていた。

私達の前の水槽は、幅1m、高さが50センチくらい。
厚みはなくて、まさに観賞用水槽、と言った感じ。

金魚が、結構大きめのが十匹くらいいる。
個体色は金色っぽいオレンジ、白地に赤や黒の斑点があるものなど。
ヒラヒラと優雅に舞うように泳いでいる。

その一見すると平和そのものの水槽内で、
だんだん異常な事態が起こっている事に気付いた。


一匹、獰猛な金魚が混じっているのだ。

最初、
「こいつ元気いっぱいだなー」
「仲間追っかけ回してるね」くらいでほのぼの見てたけど、
だんだんとシリアスな雰囲気になって来た。
「、、、今こっちの子の尻尾齧ったよね。」
「、、、うん。今度はこっちの金魚に噛み付いた。」
「カニバリズム?」
「よく見るとなんか皆必死で逃げ回ってるな」
「今度はこっちの子追いかけてるし、、、」

カニバリズムは人肉嗜好なので、
この金魚が金魚を食っとる状況は
共食い、が正しいのだろうか。

とにかく一匹オレンジの金魚が、一時も休む事なく、
他の金魚を追いかけ回し、尻尾を食いちぎろうとしているのだ。
麻薬でも打たれたような、なんかイカれた動きだ。

他の金魚の尻尾にガブっと噛み付いた後、
また別の金魚の尻尾を目がけて泳ぎ、噛み付く。

一匹の金魚は尻尾が本当にボロボロになっていて、
なんか助けを求めるような必死な動きをしている。

か、可哀想、、、

小学校に凶器持った変質者が入ってきたけど、
閉じ込められてて警察に電話も出来ない、という状況に似ている。
「ぐへへ、、、」おっさんの包丁ギラギラ。
「キャーキャー」逃げ惑う児童たち。

金魚が、、、金魚がこのままじゃ死んじゃう!

そこで、紅茶とグレープフルーツジュースを持って
店員さんがやってきたので、
この無差別連続淫行罪の金魚を密告した。

「この金魚、他の金魚食ってます!」

そこでの店員さんの言葉が、ちょっと深かった。

「あらあら、まあ魚の世界もいろいろありますからね〜」
予想外に落ち着いてるな〜、、、

「あったかくなって来るとね、メス追い回すオスとかいるんですよ。あんまりひどかったらなんとかしましょうかね」


懐が深いな〜。
なんか、勉強になった。

金魚の世界も、それはそれでいろいろあるんだ。

春先で、異常に発情しちゃったのかな。
来週辺りになったら
「あ、、あれ?俺一体何をしていたのか、、、あの子の尻尾、何であんなボロボロに、、、ええっ俺何も知らないよ!?」
と我に帰るのかな、、、。
しかし時すでに遅し。
周りの金魚の冷たい視線、、、。
変態と呼ばれ、誰からも無視。
やりきれない金魚はまた他の金魚を追っかけ回し、
悪循環は続く、、、。
「俺が悪いんじゃない、春だ!春のせいだ!」

ゆくゆくは逮捕だなあ。
(あーどうなるんかなあ、あの水槽の今後)

ただやっぱり自分があの周りの金魚の立場だったら、
「この人早く捕まえて〜!食われる!」
って思うよね、、、と思い、店を後にした。