ねこぢる展

Yahooニュースを見てたら、
渋谷で「ねこぢるy」の展示をしているという項目があったので、
平日に行ってみることにする。

(ねこぢるとは:
バブル期のガロでブームになった、グロくて皮肉たっぷりの
猫の漫画。作者の「ねこぢる」という女性は、人気絶頂の時に自殺した。

今は彼女の旦那さん(もともと漫画家)が「ねこぢるy」という名義で作品を描き続けてる)



かなり怪しげな立地のギャラリーで、
入ってる建物自体から、
アングラな感じがぷんぷんする。
(なんか妙にワクワクする)

ネットでニュースになってるくらいだから、
そこそこ混んでるかと思いきや、
私以外に誰もいなかった。

しかしまあ、そのおかげでじっくりと作品を見る事ができた。
新作の切り紙と、新作の漫画の原稿。

あとは、ねこぢる本人のイラスト原画が二点。
隅っこにあったけど、私にはこれが興味深かった。


小学五年生の時、無性にこのねこの漫画が読みたくて、
大人向けコーナーにある、少々お高めな雑誌を、地元の商店街で購入。
当時、たしかガウディというタイトルだった。

待ちきれずに家路の途中で、
袋を開けて中の漫画を読んだ。

衝撃のエログロ。
大人になった今は大丈夫だけど、
当時はそんな漫画読んだことないから、
あまりのショックに家の近くの空き地に放り投げて、
ダッシュで帰った。
その事を告げると、
「あら、勿体無い。お母さん読んだのに。」と言うてたうちの母...。

で、トラウマになりもう一切単行本を買う事もなかったのだが、

社会人になって数年した頃、
務めていたぬいぐるみ会社の社長が、

紙袋いっぱいにねこぢるの漫画を詰めて持って来て、

「学生の頃好きで全部持ってたけど、

今もうこのセンスは読めなかった...いるならあげる」

「もらいます」とやりとりして全巻もらった。

そのときやっとねこぢるの漫画を読む事ができた訳である。

私は大抵の漫画家に対してそうなんだけど、
初期の作品の方が好き。

後半は読者の空気読むのか、絵も内容もこなれた感じになるけど、
初期は「ウケなくても、自分が描こうと思った物を描いている」感じがする。

彼女の作品も、持ち味の絵柄の可愛さ×グロさや弱者いたぶり
は最後まで変わらないけど、初期はその中にもっと
「子供の頃の不思議な恐怖感」のようなものがあった。

また、ねこぢると私は同じ形のスピーカーを持っている。
(エッセイの中で描いていたので知ってる)
好きな形が似てるんじゃないかなあ。


で、ねこぢるyの展示の話に戻ると、
漫画の原稿はエグかった。
旦那さんの仕事は、緻密で細かい。

二枚あるねこぢるのイラスト原画は、
一枚が夏の海。
あまりにポジティブなイメージなので

「これ本人全然こんなの描きたくなかったんじゃないかなあ」と予想。

 

もう一枚はにゃーことにゃったの姉弟が座ってる絵なんだけど、
手の先っちょの部分を修正した跡があった。
その形状修正の意味が「分かるなあ」と思ったので、
彼女と形の感覚が似てる気がした。

(生きてたら奈良美智好きだったんじゃないかと思う。)

他に印象に残ったのは、
ギャラリーのアングラ感とは対照的に、
そこのお姉さんが児童向け絵本でも売ってそうな柔らかい物腰だった事。
「こう見えてエログロ的な物が好きなのだろうか...
いやそもそも分かっててここにいるのかなあ」とかいろいろ考えてしまい、彼女に勧められたブックカバーを
いらんのについつい買っちゃったよ...。

帰り道、今回の展示、というかねこぢるの旦那が意思を引き継いで
彼女のの漫画を続けている事を彼女があの世で知ったらどう思うかなあと考えた。
「やめりゃいいのに」と苦笑しながら、まあまあ嬉しいのかなあと思う。