「自分の棺桶を自分で作る」

今朝、ふっとこの言葉を思い出して、
これ何の言葉なんだっけ...とパッと出処が思い出せず、
しばしうーんと記憶を巡らす。

映画だっけ漫画だっけ、それとも小説、はたまたネットのニュース??

なんとか必死で思い出したら、先週末に見たテレビのドキュメンタリーでした。

非常に衝撃的な内容で、
途中から見出したにも関わらず、
最後まで釘付けで見てしまったのだった。

どういう内容かと言うと、
日本のある農村に暮らす一家の話なのだけど、
ちょっと普通と違う点は、
お父さんが...はっきり言って狂ってる点。

目に見える精神異常とか統合失調症ではないんだけど、
まだ幼い子供達に、学校にも行かせず、
自宅での自給自足の為の強制労働を強いてる。

外国や、ずいぶん前の日本なら
そんな珍しい光景でもないんだろうけど、
私達とそんなに年齢変わらないし、
日本でこういう人達もいるんだなあと、
驚いた。

布団の上げ下ろし、洗濯、炊事、乳搾り、田植え...
それくらいなら、ある意味正しいと言えなくもないけど、
朝から晩までだし、屠殺はちょっと...と思うのは甘えた考えだろうか。

自分で育てた鶏を、まだ10歳かそこらなのに、
殺させ、血抜きもさせる。
嫌がる鶏の首を切り落として、
頭が無くてもバタバタ暴れる様を見て
幼いながらもたくましい十歳の長女が、
その時ばかりは嫌がり、
目に涙を浮かべる。

それを見て15歳のお兄ちゃんが変わりに鶏の血を抜いて上げる。

女の子の心底嫌そうな涙を見ると、
ここまでさせるべきなんかなあ、と思った。

父は「学校に行く行かないは、子供の判断に任せてる。
自分は子供と働けるのは嬉しい」と言うのだが...。

そりゃー朝から晩までいろいろな仕事をさせっぱなしで、
学校に行ける時間なんてないし、

絶対言いだせる雰囲気じゃない。

当然、子供らにお小遣いとかも上げるわけないので、
小さな女の子二人の唯一の楽しみは
お兄ちゃんが焼く焼きたてのパン。
それで生計を立てているらしい。

兄妹は6人いて、
上の三人は男の子、下の三人は女の子。
年齢は18〜8歳くらい。

最初の方見てないので、
お母さんが何でいないのかは分からないけど、
ずっといない様子。

前半は彼らの子供の頃の映像で、
このドキュメンタリーの面白いのは、
それから15年経って大人になった彼らがどんな生活をして何を思うのか、
後半でそこまで追っているところだ。


長男次男は、30歳くらいなので結婚して家庭を持ち、
父のように自給自足の生活をしている。

ちょっとヤンキーぽかった三男(でも長女の鶏の血抜きを手伝ったのは彼)は
山の中のアスレチック場の仕事をしている。

長女は外国人向けのシェアハウスのようなところの、
家事全般をしながら、英語の勉強中。

一番下の双子の女の子達も、
今は24歳になり、大阪でバイトをしながら暮らしている。

彼女たちは、小さい頃に学校で初歩的な勉強をしてきていないので、
人より計算が遅かったりと、
やはり社会に出てから苦労したそうだ。

見た目はその辺にいる子達と変わらないけど、
やっぱり育ってきた環境があまりに他と違うため、
いろいろ知らないね、と言われる事もあるそうで、
その事を話す彼女たちはちょっと辛そうだったな。

その辺の子が出来ない、山羊の乳搾りや鶏の血抜きとか出来るけどね...。

今はもう皆家を出て、実家は父親だけになってしまった。
そしてその父親が、癌になってしまった。

それで、末っ子の2人が、一日だけ家に帰ると言う日を
テレビカメラは撮っていた。

お父さんは昔もっとギスギスしてたけど
ちょっと人間丸くなったみたいだった。
多分娘が帰って来て嬉しかったんだろう。

三人ですき焼きを作って食べていた。

父親「肉なんて何年ぶりだろう」
娘1「思ってたほど弱ってなくて良かった」
娘2「お父さん、何でも自分で作ってたし、
棺桶も自分で作ったら?自分で棺桶作ると長生きするっていうし」


こん時の言葉だったんだな〜と思い出した。

家に戻ったのは1日っきりで、
二人は次の日には大阪に帰って行った。

取材した記者が
「お父さんのこと、うらんでないの?」と聞いた。
娘は「恨んだりとかはないです」と答えていた。

お父さんの選択は、
他人がいいとも悪いとも口出し出来ないんだけど、
(彼は彼なりに正しいと思って判断したんだろうし)
自分だったらやっぱり周りの子と同じように
暮らしたいって思っただろうから、
普通に学校行かせてくれた親に感謝だな...
とこういうの見て思う。

 

あと棺桶はオリジナルでデザインしてみたいよね〜

 

柳美里著

「まちあわせ」の表紙にイラストが使われました。

(発売:2016.11.8)

 

よろしくお願い致します!