ゴキブリ退治

旦那と普段あんまり歩かない近所の道を歩いていたら、
あるマンションの前で、部屋着を来た若い女の子が駆け寄って来た。

「通りすがりの人に突然こんな事を頼むのは申し訳ないんですが、
部屋に出て来たゴキブリを殺して貰えないでしょうか」

私「いいですよ」←あっさり(こういう時あまり躊躇しない)
旦那「ええっ」(躊躇しまくる)

若い女の子「本当スミマセン〜もし殺せなくても、部屋のスマホ取ってもらえるだけでもいいです。彼氏に救援頼むので。」
私「私ゴキブリは大丈夫なんです。芋虫はダメだけど。」

3人でオートロックのマンションの一階に入って行く。
旦那「突然こんな事...あるんだなあ」

女の子「引っ越したばかりで散らかっててスミマセン...あ、こんな物あります」
ゴキブリ用のスプレーを差し出される。
私「あ、こういうの便利だよね。最近良く虫殺してるんで慣れてます。
で、どこですか」
女の子「今はどこにいるかわかりませんが、さっきはこっちの部屋にいたはず...」

発見。リビングの天井にでかいのが張り付いていた。

私「あ、あそこにいますね」
女の子「わー!わーっ!」

ふふふ可愛いのう。
全然びびらない俺。

至極冷静にゴキブリの真下に立ち、
借りたスプレーを向けてしばらく長押し。
ゴキブリは抵抗もせずたちまちフローリングの床にぽてっと落ちた。
mono消しゴムくらいのサイズ。
まあまあでかい方の部類だろう。
別に怖くもなんとも無い。

芋虫だったら三件隣の部屋にまで響き渡る悲鳴をあげるんだけど。

落ちて来て気絶してるっぽいゴキブリ君に致命傷を与えるべく、
更にスプレーを浴びせる。
女の子に要らない雑誌とか紙、ティッシュ、ゴミ袋を持って来て貰う。
さながら看護婦に「メス!」とテキパキ指示を出す執刀医のように。
無抵抗のゴキブリ君を、筒状に丸めた紙の封筒でバシバシ叩いて撲殺。
ティッシュでつまんでコンビニレジ袋に入れる。
袋の口を二重三重に縛る。

私「はい」
女の子「たくましい...」

何で皆ゴキブリ怖いのかな。
私にとっちゃてんとう虫とかとあまりかわらない。
まあ私も芋虫は得体の知れない恐怖感があるから、
私はたまたまその対象がゴキブリじゃ無くて芋虫なんだろうな。

1人でちゃっちゃか退治したので、
女の子と旦那は後ろでぽけーっと見ているだけだった。

女の子「本当にありがとうございます...なんとお礼していいか。
あ、グレープフルーツとか好きですか?」
ゴミ箱の上に乗ってた二つのグレープフルーツを差し出された。
さっきゴキブリを入れた袋を放り込んだプラスチックのゴミ箱の上に乗ってたやつですね。
私「困った時はお互い様ですからね。あ、食べます。」
気分は水戸黄門。

柳美里著

「まちあわせ」の表紙にイラストが使われました。

(発売:2016.11.8)

 

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