収容病棟

久しぶりに、どうしても見たい映画があって、
先日一人で見に行った。
 
中国人のワン・ビン監督の”収容病棟”。
 
中国の精神病院のドキュメンタリーで、
全編後編合わせて四時間もあるという。
 
この監督の昨年公開された映画
”雲南の娘”がめちゃくちゃ見たかったのに、
見逃してしまい、ずっと後悔していたのだ…。
 
数日前から楽しみにしていたのに、
渋谷のシアターイメージフォーラムが、
あまりに久しぶりだった為、道に迷ってしまい、
15分程遅刻してしまった。
 
どうしよう…次の回からにするか
それとも最初の15分は諦めるか、店員さんと話し合い、
「じゃあ諦めて今から見ます」と言ったものの、
見出したらなんだか全然話についていけなさそうだったので、
「すみません、やっぱ四時間後にまた来ていいですか」と謝って
再入場を許してもらった。
 
で、どんなだったかというと…
うーん、すごい。
 
結局この日は前編だけ見たので(後編は別の日に見る事にした)
前編だけの感想になるけど…
 
見ていて思ったのは、精神病院って、なんだか動物園みたい。
言葉を喋れる人間のはずなんだけど、
檻の中の(実際檻なんだけどね)クマや猿みたい。
 
映されてる人達が監督の事全然気にしないで、
全て隠さず、ありのままに生きてる。
(たしかアシスタントと2人でずっと撮影していたとか。)
 
演技でもなんでもなくありのままの生活って、
なかなか見れないんだよね。
 
通常の精神の人間だったらカメラって意識してしまうと思うんだけど、
精神を患っているからか、またよっぽど監督が気配を消すのがうまいのか…
 
見ていてふっと思い出したのは、松本大洋の”鉄コン筋クリート”のシロ。
シロみたいに無害な患者が主だけど、
たまにクロみたいな暴力的なキャラクターもいる。
あの美醜が混沌とした世界に似てる。
 
ワン・ビンが映したいのは、
きらびやかな作り物の世界じゃなくて、
現実に生きている人達の、ぱっと見汚くて無駄で価値のない
本当の人間なんだろうな。
 
あの場所で彼らをずっと撮り続けるなんて、すごい。
多分彼らに対するものすごく深い興味と愛情がなければ、
きっと数日で逃げ出してしまうであろうに。
 
ただ、欲を言えば、
いつからどんな風にして彼らが狂ってしまったのか、
理由や背景もちょっと知りたかった。
 
名前や収容年数はテロップでちょっと出るけど、
情報はそれだけ。
 
あとはひたすら、彼らのありのままの毎日が画面に映し出される。
急に走り出したり、独り言を言い続けたり、
食事、着替え、排泄(スカトロシーン多かったな!股間もモザイク無しです。一度ならず数回。)、
眠る前の儀式みたいな動作、その他もろもろ、あらゆる生活のシーン。
 
こういうドキュメンタリーに抱く感想って難しい。
 
面白がらせようとしているエンターテイメントでもなく、
怖がらせようというホラーなどは、観客にどう思わせたいか明確だけど、
そういうのと違って....、
でも悲しくさせるわけでもない。
 
ただ、ああ、現実なんだな…という感じ。
すごくリアリティはある。
 
絶対に自分が踏み込めない場所の、
現実の毎日。
彼らは今現在もあそこで、
ベッドを蹴り壊したり、
お菓子を独り占めしたり、してるんだろうな。
 
見かけは私たちと何も変わらない普通の人間。
でも何が決定的に違うというんだろう。
まだわからないものを見た。
 

柳美里著

「まちあわせ」の表紙にイラストが使われました。

(発売:2016.11.8)

 

よろしくお願い致します!